モルタル外壁の歴史について現在使われている種類と近年の動向を解説

「モルタルって今でも外壁に使われているの?」このような疑問にお答えします。この記事では、モルタルの歴史や現代での使われ方と今後の動向について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

モルタルが建材に使用されるようになった理由

モルタル造形

日本では大正時代から壁にモルタルが使用されるようになりました。それまでは、土にわらや木材を混ぜた土壁や、漆喰と言われる水酸化カルシウムと石灰石を焼いて水で固めた物が主流でした。

明治時代には西洋文化が多く日本に入ってきた影響で、モルタルが使われていたようですが、当時は高価な代物だったので一部のお金持ちの家でしか使用できませんでした。モルタルが建材として普及し始めた理由は、土壁のデメリットとモルタルのメリットが当時の出来事と大きく関わってきます。

土壁はわらや木材で作られているので、火災の際に一気に燃え広がってしまいます。反対にモルタルは、耐熱性が高く火災が起きても燃え広がりません。特に、関東大震災の影響が大きかったようで、二次災害で火災が起こり一面焼け野原になった際に、モルタル壁は焼け落ちませんでした。

次に、戦争がはじまり空襲でも木材建築の家が焼けていきました。戦争が終わって復興が始まると、火災に強く丈夫なモルタルが建材として多くの注目を集めていき、日本の左官職人が技術を持っていたので、法律整備が終わり次第急速に広まったようです。

モルタル外壁の仕上げ方

モルタル造形

モルタル外壁の仕上げ方の種類は下記のとおりです。

● リシン仕上げ
● リシンかき落とし仕上げ
● スタッコ仕上げ
● 吹き付けタイル仕上げ
● 左官仕上げ
● モルタル造形

それぞれ解説します。

リシン仕上げ

砂を多めに混ぜた塗料を吹き付けることで、ザラザラとした質感で落ち着いて温かみのある雰囲気に仕上がります。初期費用が比較的安く済みますが、硬めに仕上がるのでひび割れがしやすくなってしまいます。

リシンかき落とし仕上げ

リシン処理をした上からブラシなどでひっかいて、表面をさらにザラザラにした仕上げ方です。重厚感のある雰囲気に仕上がって通気性に優れていますが、価格が高くなる傾向があります。

スタッコ仕上げ

モルタルに石灰などの他の材料を混ぜた物を塗っていく仕上げ方です。施工法は職人が調節コテで塗るやり方と吹き付けて凹凸をつけるやり方があり、吹き付けた後にローラーである程度凹凸を慣らす方法もあります。

吹き付けタイル仕上げ

吹き付けタイルは専用の機械で、塗料を吹き付ける作業を数回繰り返しておこなう仕上げ方です。リシンやスタッコのように他の材料を混ぜないので、柔らかく仕上がり耐久性に優れています。また、吹き付けた後にローラーやコテで表面を押さえつけるデザインもあります。

左官仕上げ

職人が手作業で模様を描いていく仕上げ方です。手作業なので味わい深い雰囲気に仕上がり、職人によっては様々なデザインを依頼できます。反対に、職人によっては満足できる仕上がりにならない場合があるのと、施工に時間が掛かり価格も上がる傾向があります。

モルタル造形

モルタル造形とは、モルタルを使って様々な造形を作り上げる技術です。木材やレンガ、金属の質感やアンティーク調の物まで、幅広く造形できます。ただし、高い技術が必要なのと施工時間や価格が1番高くなるでしょう。

近年のモルタル外壁の割合

モルタル造形

近年の外壁にモルタルが使われている割合は、約8%とあまり高くありません。一番普及しているのが「窯業(ようぎょう)サイディング」と言われる建材で、普及率は約80%にものぼります。

窯業サイディングとは、セメントに繊維を混ぜて板状にした外壁用板材です。特徴として、比較的安価で、施工も貼り付けるだけなので早いことがあげられます。また、デザインも豊富でお好みのデザインを選ぶだけなので、とても手軽です。耐火性も高いので、安全性も兼ね備えています。

反対に、モルタルの性能は窯業サイディングに劣らないですが、施工時間がかかるのと職人の技術に左右されるので安定性に欠けます。しかし、近年改めてモルタルなどのコンクリートが注目されています。詳しい理由はこの後解説します。

モルタルが近年改めて注目されている理由

モルタル造形

モルタルが近年改めて注目されている理由は下記のとおりです。

● SNSが急速に拡大した
● 新型コロナウイルスによってお家時間が増えた
● 3Dプリンターが進化した

それぞれ詳しく解説します。

SNSが急速に拡大した

元々は、大型のテーマパークで雰囲気を作ったり、映画のセットとして利用されてきました。しかし、近年SNSが拡大した影響で、個性的でオシャレなデザインが注目され始めました。

SNSにおいて写真ばえは重要な影響を及ぼし、写真ばえするだけで人が集まるようになります。そのため、企業がモルタル造形でオシャレな店舗を作り、顧客を集めようとする戦略が増えてきている傾向にあります。

新型コロナウイルスによってお家時間が増えた

2020年頃から流行り出した新型コロナウイルスも影響していると言えるでしょう。気軽に外出ができなくなってお家時間が増えた際に、家でできる趣味が注目を集めます。材料や道具がホームセンターで揃うので、モルタルでオシャレな小物を作ったり、家具をリフォームするのが趣味として認知され始めます。

上述したSNSの写真映えと合わせて、オシャレな造形ができるモルタル造形の人気が高まりました。

3Dプリンターが進化した

外壁に限った話ではありませんが、3Dプリンターの発達により職人の技術に頼らなくても、気軽に建築ができる技術が話題になっています。価格も比較的安価で家が建てられて、施工期間も大幅に短縮できます。

3Dプリンターにセッティングする材料として、専用の特殊モルタルが使用されています。日本でも2023年より販売が開始され、最初は試験的にグランピング施設として利用されるようです。

日本では、建築基準法が厳しくあまり話題にあがっていませんが、世界では90社以上が開発と研究をしている注目の建築法です。近い将来は、3Dプリンターで作った家が当たり前になる未来が訪れるかもしれません。

まとめ

モルタル造形

この記事では、モルタル外壁の歴史や今後の動向について解説しました。

モルタルは大正時代から建材として多く使用されるようになりました。地震や戦争の影響で、燃えやすかった土壁のかわりに耐火性の高いモルタルが注目されたからです。

モルタル外壁の仕上げ方は下記の種類があります。

● リシン仕上げ
● リシンかき落とし仕上げ
● スタッコ仕上げ
● 吹き付けタイル仕上げ
● 左官仕上げ
● モルタル造形

しかし、現在ではモルタルが外壁に使われる割合は低くなっています。具体的には全体の約8%程しかなく、窯業サイディングという外壁が全体の80%を占めています。

しかし、近年SNSの拡大や新型コロナウイルスの影響、3Dプリンターの進化によって、モルタルが改めて注目されています。オシャレで特別な空間を演出できるモルタル造形は、写真映えを意識しているSNSユーザーの注目を集めます。また、新型コロナウイルスでお家時間が増えたことで、お家で出来る趣味としてモルタル造形が広まりました。

また、3Dプリンターが進化して、モルタルを材料に家を建てられるようになっています。日本では大きな注目を集めていませんが、世界的には最も注目されている技術の1つで、将来は3Dプリンターで作った家が当たり前になるかもしれません。